成熟した神経回路を維持する仕組み
去年の報告ですが、興味深い情報がありました。
以下引用です。
脳の神経細胞レベルの研究からも、子供の脳では発達初期に過剰な神経回路が形成され、その後、生育環境によって必要なものは残り、不必要なものは刈り込まれて精密な神経回路へ成熟することが知られています。一方、いったん成熟した神経回路は柔軟性に乏しく容易に変化しないものと考えられていましたが、ごく最近になって、一度成熟した神経回路がその後も正しく維持されるためには、生育環境からの持続的な経験が必要であることが少しずつ明らかになってきました。たとえば、視覚をつかさどる神経回路がいったん成熟した後、視覚情報を遮断すると、成熟した回路を維持することができなくなり、完成した神経回路が退縮し、余分な神経回路が作られて正確さが失われ、まるで子供の未熟な神経回路のように変化することが知られています。
特に興味深いのは以下のところです。
図2 マウス視覚系の神経回路の発達過程
マウスは眼が閉じた状態で生まれ、生後14日頃に開眼します。眼が開く以前の視覚視床の神経細胞は、10本以上の視神経線維とシナプス結合しています。眼が開いてから約1週間で、余分なシナプスが刈り込まれ、必要なシナプスだけが残り、成熟した神経回路が完成します。これまでの研究から、シナプスの刈り込みが完了した生後20日以降から、マウスを暗闇で飼育して視覚情報を遮断すると、シナプスの数が再び増加し、神経回路が開眼前の未熟なときのように退行してしまうことが知られていました。つまり、視覚情報が正常なときは、神経回路を成熟した形に維持する機構が存在すると考えられていましたが、その仕組みはわかっていませんでした。
本報告の発見は、視覚視床のmGluR1というタンパク質が、視覚情報に依存して神経回路を維持することを発見したことにあるのですが、神経科学の素人が見て興味深かったのは、
- 目が開く以前の視覚視床の神経細胞は、10本以上の視神経線維とシナプス結合している。
- 眼が開いてから約1週間で、余分なシナプスが刈り込まれ、必要なシナプスだけが残り、成熟した神経回路が完成する。
- シナプスの刈り込みが完了した生後20日以降から、マウスを暗闇で飼育して視覚情報を遮断すると、シナプスの数が再び増加し、神経回路が開眼前の未熟なときのように退行してしまう。
- 神経回路を成熟した形に維持する機構が存在する。
という4点です。
これらの生物学的な事実がAI開発に応用されているのかに興味があるのですが、まだまだニューラルネットワークの基礎を勉強している段階の私にはわからないところです。
早く基礎を身に着け、最新の論文をフォローできるようになりたいものです。